辺見庸 著「水の透視画法」の衝撃

これは、現代の「徒然草」だろうか。全体を覆う、無常観と滅びの予感。坦々と綴られるエッセイだが、時事問題と絡めて丁寧に描写された「日常」は、重い。

辺見氏は、長く共同通信社で働き、中国ハノイなど駐外経験も豊富で、退社後執筆活動に専念された。現在、氏は半身不随で病を併発した体を克して、この本を命を削るように、というより骨を削るようにして執筆されたように思える。
辺見氏の直観力、デリケートな感能力は、ささやかな出来事から背後に大きく広がっていく現実のリアルを焙り出していく。氏の言葉に対する態度は厳密で、一語一語を練り上げる。1人も物書きとして、1人の読者に届けばいいという。一見独りよがりに思われそうだが、作者と受け手の間に入る作為の、一切に妥協しないという厳しさだ。時間を掛けて一つ一つ、正直に、負の部分も当然のように正視し向き合う、そんな文章だった。

日常的に「大事件」はたくさん起こっているかもしれない、そのことに目を塞いでいるだけなのかも知れない。

水の透視画法

辺見 庸 / 共同通信社


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by isaotoshimori | 2011-08-26 17:28 | アート